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射的で競い合い、かき氷などを食べ、やがて花火が打ち上げられる時間がやって来る。屋台のある通りから人がぞろぞろと花火が見えるスポットへと移動していく。
「俺たちも移動しましょうか」
涼介が声をかけると、ポテトを食べ終わった光里は「こっち」と全員が歩く方向とは真反対に涼介の腕を引っ張る。
「先輩?」
「こっちに穴場のスポットがあるんだよ」
そう言って連れて行かれたのは、とあるマンションの屋上だった。光里の従姉妹が住んでいるマンションだと説明された。屋上には誰もいない。
「ここならのんびり花火が見えると思って」
そう言って光里は笑う。涼介も「そうですね」と笑った。その笑顔の裏にある心がまた痛みを訴える。
恋に落ちるのは、花火が打ち上げられて消えていくまでの一瞬の時間と似ている。この不毛な気持ちも恋に落ちるのと同じように一瞬で消えてしまったら、そう何度も涼介は思った。しかし、心はそれを許してはくれない。
(どうして恋ってこんなにも苦しいんだろう……)
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