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好きな人との花火大会。それはきっと一夏の輝く楽しい思い出になったはずだ。しかし涼介の心は沈みそうになっている。彼は今、不毛な恋に心を全て絡め取られてしまいそうになっていた。
(好きです)
心の中で何度も呟く。面と向かって言えない告白を何度も呟く。やがて、放送の声が二人の耳に届いた。
『皆様、大変長らくお待たせ致しました。只今より花火の打ち上げを開始致します』
数秒後、真っ暗な空には大輪の花が咲くのだろう。涼介が空を見上げたその時、光里が「あのね」と言った。涼介が光里の方を見ると、彼女は頰を赤くしながら涼介を見ている。
「私、友達としか思っていない男の子を花火に誘ったりしないから」
「えっ……」
涼介が呟いた瞬間、空に花が咲いた。色とりどりの美しい花が次々に音を立てて咲いていく。
騒がしい音の中、光里の唇がゆっくりと動いた。
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