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こそこそしているとかえって怪しまれるため、変装を解いたセイラとデュランは、堂々と金庫のある部屋の前まで来た。
「これはこれは、セイラ様。このようなところに何用で?」
さすがに警備兵が多い。セイラは、横目でスキがないか見回したが、そのようなものはなさそうだ。
「王子に頼まれたものを取りに来ましたの」
「左様でございますか。では、中にいる管理官にお申し付けいただければよろしいかと」
管理官に「リザンブルグの重要書類を」と言っても、出してくれるわけはないだろう。問題は、ここにいる警備兵をどうするか、ということである。セイラは、笑顔で警備兵に近づく。
「ところで警備兵さん? 王子が呼んでらしていたの。私との時間を安全に過ごしたいから、周りの警備兵を増やしたいって」
そう言うと、警備兵は困ったように頭をかく。
「またですかぁ? ここの警備も重要なんですよ」
「ええ、わたしもそう言ったのですが……王子はああいう性格でしょう? 聞いてくださらなくって……」
セイラは頬に手を当ててため息をつく。その演技を、デュランは黙って見ていた。
「仕方ないなぁ、で、どこに行けばいいのですか?」
「西の塔に、できるだけ人数を集めてくれ、とのことですわ。わたしも後から参りますので、先に行っていてくださいますか?」
「わかりましたよ。王子のワガママは、いつになったら直ってくださるんでしょうね。おい、王子がお呼びだそうだ、行くぞ」
他の警備兵に声をかけ、その場にいた警備兵は、全員西の塔へ小走りで向かった。
「……やりますね、王女様」
デュランが、感心する。
「王子の性格を逆手に取った作戦よ。王子がワガママでよかったわ」
セイラは、鼻を高らかに笑った。
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