28人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなことじゃないだろうかとは思っていたけれど、まさか本当にこうなるとはね」
ノキアは剣の柄に手をかけ、セイラを背に庇うように立った。
「読まれていたのか?」
「多分……。それに、王子ならわたしと一緒で、隠し通路も知っている。先回りも可能だわ」
後もどりはできない。しかし、前方には王子と警備兵。逃げ場はない。
王子は肩をすくめ、やれやれといった風に首を横に振った。
「残念だよ。君のことは信じていたのに……」
「なに言ってるのよ! そっちが先に盗んだんでしょう!?」
「セイラ!」
「ふふふ……認めたね? 書類を盗んだということを」
「あっ……」
しまったと、セイラは口を押さえた。黙っていれば、シラを切り通すこともできたかもしれないのに。
「やれ。ただし、王女は傷つけるな」
王子の号令で、警備兵は一斉に剣を構えた。警備兵は4人。他の警備兵は、デュランのところと、他の場所で待機しているのだろう。ここを切り抜けても、難関は多い。
しかし、まずここを切り抜けられなければ、脱出は不可能である。ノキアもまた、剣を構えた。
「仕方がない……。行くぞ! 我が名はノキア・ミタ・カーラウト!」
名乗りながら剣を抜き、地面を蹴って走り出す。
「なにっ、ミタだと!? て、鉄砲だ、鉄砲を用意しろ!」
「はああああああっ!!!」
王子は指示したが、すでに剣を振りかざしている者に間に合うはずもなく、警備兵4人は、あっという間にノキアに叩きのめされる。
「ノキアも、ミタの使い手だったんだ……」
ミタの剣術の使い手は、デュランだけだと思っていたのだろう。セイラは、ノキアの剣術を見て驚いていた。
ノキアは、残り一人となった王子に狙いを定める。
「ま、待て! 反則だろ、おまえがミタの使い手だなんて……! そ、そうだ、待て、こうしよう……!」
言いながら、王子は懐を探った。懐の中で、カチリ、と音がした。それがなんなのか、ノキアにはすぐわかった。
「なーんてな」
最初のコメントを投稿しよう!