5・作戦開始

5/5
前へ
/32ページ
次へ
 王子は、にやりと笑いながら、拳銃を発砲した。  動きを読んでいたノキアは、かろうじて避けたが、衝撃でウィッグと眼鏡が飛んだ。 「あの近距離で避けただと!? くっ……拳銃はまだ試作段階で、連続では…………え?」  ウィッグと眼鏡の飛んだノキアの姿を見て、王子は困惑した。ノキアは、念の為もう一つ、ローズピンクのウィッグを身につけていたのだ。 「セイラ殿が、二人……? どうなってるんだ……?」  そのスキを見て、ノキアはセイラの手を掴み、引っ張った。 「今だ、走れ!」 「しまった! これは使いたくなかったが……仕方がない!」  王子は、最後の手段に何かを投げた。 「いけない! あれは、アイゼン最新型の爆弾よ!」 「なにっ!?」  ノキアが、セイラを抱きかかえようとしたその時、セイラがつまづいて転んだ。 「セイラ!」 「大丈夫、走って! あっ……!」  起きあがろうとした拍子に、書類の入った筒が転がり落ちた。 「ダメだ、戻るなっ……!!」  ノキアは制止するが、セイラはそれを慌てて拾う。  再び走り出すと、すぐにノキアがセイラの手を引っ張った。しかし、それとほぼ同時に爆弾が光を放った。ノキアはセイラを胸に抱きかかえ、伏せようとしたが遅かった。爆発の直撃は逃れたが、爆風で廊下の向こう側まで吹き飛ばされ、体を強く打った。城壁が少々崩れ、細かい破片がノキアの上に降り注ぐ。  ノキアは、ほんの少しの間だけ、気を失った。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加