1・うりふたつな王女様

3/3
前へ
/32ページ
次へ
 少女が人ごみをかきわけて、なんとか一番前へ行くと、探していたスタンがうずくまっており、それを見下ろしている剣を持つ男の姿が見えた。 「ちょっと、スタン!? なにやってるのよ!? 探したんだからね!!」 「へっ!? セ、セイラ様!? す、すると、あっちのセイラ様は……?」  スタンが、セイラとノキアの顔を見比べる。  セイラとノキア、またデュランも、ふたりの瓜二つな風貌に驚きたたずんでいた。 「これは、驚いた……。こうもそっくりな人物がいるとは」  ふたりを見比べると、ノキアの髪が若干青みがかっているのと、目の色が違うだけ。それ以外では、ほぼ見分けはつかない。   *  四人は、人目につかない場所へ移動し、今までの経緯をセイラに話した。 「見間違えた!? ばっかね~、全然服装が違うじゃない!」  セイラは、スタンを罵倒した。 「いや、しかし、こうもそっくりな人間がいるとは思わないだす……」  スタンも、主人であるセイラの前ではたじたじであった。 「それもそうね。ふぅーん……」  セイラは、ノキアをじろじろ見つめて自己紹介した。 「わたし、セイラ。あなたは?」 「私は……ノキアだ。こっちは、一緒に旅をしているデュラン」 「旅人なんだぁ。いいなぁ、わが道を行く! って感じで。あ、こいつはお目付け役のスタン。ヘマばっかりするけど、結構いいヤツよ」 「ひどいだす……今回のことだって、元はと言えば姫様が迷子になったせいで……」 「なんか言った?」  ぶつぶつと言うスタンに対し、セイラが睨んだ。 「いえ、別に……」 「うっふっふっふっふ。わたし、いいこと考えちゃった」 「……なにか、嫌な予感がするだす」  セイラは、きらきらした瞳でくるりと振り向いて、ノキアの手を取る。 「ねえ、ノキア。あなた、1日王女様体験、してみない?」 「はあ!?」  ノキアとデュランが、同時に叫んだ。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加