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 禍福(かふく)(あざな)える縄のごとし――  お爺ちゃんがよく口にしていたこの言葉は、”人生の災禍と幸福はより合わせたような縄のようで、必ず交互に来るものなのだ”という意味らしい。これをはじめに言い出した奴は、まだ幸福から見放されていないラッキーな奴だろう。  僕の人生は、天から天使が現れて救ってくれなければ割にあわない。 『なにボーッとしてやがる!! ほら、早くピンポンしろよ!!』 「す、すみません!」  イヤホンから怒声が聞こえる。  目の前には豪勢な門構えの一軒家。この時間は老婦人だけが住んでいると聞いた。ダボっとしたサイズの合わないスーツを着た僕と、その後ろに控える数名の男女達。下唇を歯で押さえつけて、現実を呑み込む。  僕は今から、強盗をしなければならない。
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