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「身分証の通りの顔だな。荷物は預かる、行ってこい」
「はい!」
パーカーにマスク姿の男性に端末を渡されて、僕は深夜パトロールに出かけた。耳にはイヤホンを付けている。なんでも、安全確認の為に端末にGPSが付いていて、緊急の指示などはこのイヤホンから音声で聞こえるらしい。夜道は危ないから安全対策をしているのだと説明してもらった。
(この車を見つけたら端末に入力して――っと)
話によるとこの仕事はどうやら政府の極秘資産調査らしい。通勤などで昼間は出払っている車も多いため、夜に調べるのだという。
(車を見つけるだけで良いなんて簡単な仕事だなー)
時給が良いからもっと重労働を想像していた僕は、少し拍子抜けだ。僕は指定された形の車を見つけると、ナンバーをメモしながら端末に入力をしていった。
(ん? なんだアレ)
僕は、深夜にも関わらず玄関が開いていて煌々としている一軒家を見つけた。少し指定されたコースからは逸れるけれど特に問題ないだろう。
僕は一軒家の玄関を覗く。
「こんばんは〜、大丈夫です――ッ!?」
そこには、手足を結束バンドで縛られ、ガムテープで口を塞がれた老夫婦が居た。
僕を見て目で助けを乞う老夫婦と、恐怖で足がすくんで動けない僕。イヤホンから、ドスのきいた低い声が聞こえた。
『おい、お前。もう帰れないからな』
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