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* 「ふぅん。キミ、それでこうやって軟禁されてるんだ」 「はい……。断ったらお爺ちゃんを殺すぞって言われて。その、住所も家族構成も割れちゃったので……」  僕はその後、怪しげな組織の地下アジトにこうして囚われている。時折、電話を掛けさせられたり、何かの受け取りをさせられたりしている。僕はあの深夜パトロールが強盗の下見で、丁度同じ組織が僕に渡した巡回ルートのすぐそばで強盗をしているだなんて思いもしなかったのだ。  この日は、ここに比較的自由に出入りしているダウナー系の茶髪ウルフカットのお姉さんにこれまでの話を聞いてもらっていた。美しくキリリとした顔をしたお姉さんだった。怖い男の人によると、彼女は指示役の人のジョウフ(?)らしく、兎に角手を出したら殺されると聞いた。 (いや、そんなことしないけれど)  異性のことを考えるような余裕は、生まれてこの方僕には存在しなかったのだ。  彼女はどうやら、詐欺グループのHPを作っているらしく、いつもノートパソコンを持っている。ステッカーがペタペタと貼ってあり、僕はその絵柄が気になった。 「槍とか矛を持った……天使? あれ、天使ってふわふわして可愛い女の子のイメージなんですけど」 「知らないのか? 天使は異教徒や悪魔を滅ぼすためにも戦うんだぞ。正しさの為にいつでも剣を抜ける強さが、天使にはある。そして正しい行いは、いつも神様が見ているものだ」  彼女は僕の知らない勇ましい天使について熱く語った。  それは、詐欺組織の人間にしては余りにも似合わない言葉だった。 「あぁ、そうだ。これを食え」 「? なんですか?」  そして彼女は一枚のクッキーを僕にくれた。チョコチップののったココアクッキーだった。 「会心の出来なんだ」
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