25人が本棚に入れています
本棚に追加
教団
◆教団
そこは拝殿のような場所だった。中の部屋の奥には祭壇があり、中央には寝台が置かれている。
暗闇の中、数人の男女がいるが、皆が一様に沈黙を保っている。同じなのはそれだけではない。全員白装束に身を固めている。
その中心に位の高そうな人物がいる。他の人たちはその男を崇めているように見える。
男が上を見ただけで、他の白装束の人間は上を見る。下を見れば、全員が俯く。
つまり、中心の男は教祖なのだ。
この光景を一目見ると荘厳で静かな感じに受けるのだが、そうではない。
大きな声が部屋中に響き渡っている。
大声の主は、たった一人の男だ。その男は寝台に寝かされている。そして、その体を動かすことはできない。何故なら、四肢が拘束されているからだ。大の字に手足を広げられ、手首足首共、寝台に据え付けられている手枷足枷で、身動き一つできないようになっている。
ただその男の様子が尋常ではない。
「やっ、やめてくれえっ!」と喚いたり、「お願いだっ、誰か助けてくれっ」と懇願している。
更に体をよじったり、腰を浮かせたり、外れるはずのない、足枷を解こうと懸命に足を振り立てている。
だが、助けなど来ない。更に異様なのは、ここにいる全員が男の様子を静観していることだ。
最初のコメントを投稿しよう!