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悠二は未来が長く想いを寄せている相手だ。出会いは去年の冬。クラスが違ったため、未来は悠二のことなど知らなかった。
その日の現代国語の授業内容は、芥川龍之介の羅生門だった。その際に現代国語の教師がペラペラと話し出したのだ。
『実は、この芥川龍之介はあの「吾輩は猫である」の作者である夏目漱石のことを尊敬してたんだ。夏目漱石は英語の先生をしていたこともあってーーー』
教師は夏目漱石が大好きで、授業の後半はずっと夏目漱石について話していた。それに未来たち生徒はうんざりしており、授業終了のチャイムの音は何よりも嬉しかったことを覚えている。
今からお昼休みだ。未来が国語の教科書などを机の中に片付けていた時だ。教師が「長月」と話しかけてくる。
『全員のノートを集めてあとで俺のところに持ってきてくれ。お前、背が高いしみんなのノートくらい持ってこれるだろ?』
本当に人使いが荒いと未来はため息を心の中で吐きつつ、『わかりました』と返した。教師が出て行った後、高速で全員のノートを回収していく。休み時間を一分でも多く確保したかったのだ。
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