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「ありがとうございます。なら僕は、学級日誌を書いておきますね」
悠二の優しい笑みに未来の胸が高鳴る。机に向かって学級日誌を書き始めた悠二から、未来は目が離せなかった。ピンと伸びた背中に、華奢な手が持つペンは綺麗な字が生み出されていく。悠二の全てが煌めいて見えた。
(綺麗だな……)
悠二を見ていると、未来の視線に気付いたのか彼が顔を上げる。未来は慌てて後ろを向き、黒板掃除を始めた。顔に熱が集まり、赤くなっているのが嫌でもわかる。
(ドキドキし過ぎて苦しいな)
このままもしも死んでしまったら、そんな想像が未来の頭の中で巡る。二人きりの教室で、突然倒れてそのまま心臓が止まる。その瞬間を未来は想像した。
(ちょっといいかも……。なんて、こんなこと考えてるなんておかしくなっちゃったのかな?)
恋は人の心を簡単に狂わせてしまう。おかしくさせてしまう。それを未来は理解した。
順調に学級委員の仕事をしていた未来と悠二だったが、アクシデントは起きるものである。空き教室の掃除や来月行われる文化祭のチラシ作りなど、教師から様々な仕事を言いつけられてしまった。
「やっと終わった〜……」
「ええ。お疲れ様です」
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