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九月。夏休みが終わり、学生たちはまた月曜日から金曜日まで勉強の日々が始まる。登校した初日はクラスのあちこちから「学校嫌だ〜!」という声が聞こえたものの、九月中旬に入るとその声はピタリとなくなった。
長月未来は今日、少し憂鬱だった。今日は学級委員の当番である。未来の通う高校では、学級委員長や副委員長がない。毎日生徒が日替わりでしているのだ。
(ペア、誰だったかな……)
仕事をサボる人でありませんように、と祈りながら未来は学級日誌を取りに行くために職員室へと向かう。職員室の前に着いた時、ちょうど「失礼しました」と言って一人の男子生徒が日誌を手に出てくるところだった。その生徒を見た刹那、未来の顔に熱が集まる。
(嘘!)
きっちりとネクタイが締められた制服、背が高い方に分類される未来よりもさらに十センチ以上高い身長、切り揃えられた黒髪、眼鏡をかけた顔はどこか知的だ。
「長月さん、おはようございます。本日は一緒に当番よろしくお願いします」
花野悠二が未来に気付き、挨拶をしてくる。未来は胸の高鳴りを感じながら、「おはよう。よろしくね」と返した。
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