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「あれ? もうこんな時間?」
とある平日。
時計を見てみると、十五時になっていた。
ああ……掃除と洗濯を終えて横になっていたら、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。
ボーっとした頭で時計を見る。
短針が三時を指しているのを見て、違和感に気づいた。
「琴音? いる?」
いつもこの時間はとっくに帰ってきているはずなのに、家中見渡しても琴音はいなかった。
もしかしたら、また学校帰りに道草を食っているのかもしれない。
よく公園で遊んでから帰ってくるから、今回もそれか。
いや、さすがに遅過ぎる。
心配になった私は、一応学校に連絡してみることにした。
「あ、すいません、唐川琴音の母ですが」
『あ、どうも。担任の藤野です』
「藤野先生、いつもお世話になっております。あの……琴音ですが、まだ学校に残ってたりします?」
『琴音ちゃんですか? もうとっくに帰りましたけど……』
「そうですか……」
やっぱり帰ってるか……。
一体どこの公園で遊んでいるんだろう。
『今日は集団下校の日でして、みんなで仲良く帰りましたよ』
「集団下校?」
『はい。上級生と下級生が一緒に下校するんです』
だとしたら……みんなで遊んでいるのかな。
ありがとうございましたと答えようとしたところで、キャッチが入った。
「すいません、キャッチが入っちゃって」
電話を切り替える。非通知からだった。
「はい、もしもし?」
……何の声も聞こえない。
「もしもし? 唐川ですが」
……ブク、ブク
「……え? 何ですか?」
何の声もしない。
でも、微かに音が聞こえる。
それはまるで、泡を立てながら物が沈んでいく、水中の音のような……。
「もしもし? もしもし!?」
『……はい? どうしました?』
あ……先生?
「あれ、す、すいません。何か変な電話からキャッチが入って」
『そうでしたか。琴音ちゃん、帰ってきてないです?』
「そうなんですよ。みんなで遊んでるんですかね……」
『そんなことないと思いますよ。六年生のリーダーの子が、ちゃんと責任持って送ってくれているはずです』
リーダーの子?
その子の家に電話してみたら、事情がわかるかも。
「あの、差し支えなければ、そのリーダーの子の名前と電話番号を教えていただけませんか?」
『あ、えーと……すいません、六年生の情報に疎いもので……確か……なんちゃら大和君、だった気が……』
……大和?
今確かに、大和って言ったはず。
『すいません、すぐに調べてかけ直します』
先生との電話は切れた。
少し、放心状態になる。
”ブー、ブー”
……すぐにスマホが振動した。
それは先生からの電話ではなく、見覚えのあるアプリからの通知だった。
「……成長ゲームが……どうしてまたインストールされてるの?」
退会して、アンインストールしたはず。
なのに、何故か成長ゲームから通知が届いていた。
アプリの中のメッセージボックスに受信があったみたいだ。
中身を見てみる。二通続けて届いていた。
『どうして僕も、琴音ちゃんみたく育ててくれなかったの』
『僕よりも大事な琴音ちゃん。お母さんたちの代わりに、お風呂に入れてあげたからね……』
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