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~ ロシュダール公国、へリゼラ/1752 ~
『く! 間に合ってください! 戦況の変化がこんなに著しいとは思ってもいませんでした! 二人の気配は……リーゼがお城に、ヨシュアが遠くに……ヨシュアが気になります、先に!』
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「俺達の国だ! 俺達の大地だ! いいか、みんな! 怯むな、臆するな! ここで倒れたら大切な国が、街が、愛する人が踏みにじられる! 騎士団が来るまでここは絶対に守りぬくぞ!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおうっ!!!
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『騎士団ではなく恰好がまちまちのの軍団という事は、防衛を買って出た民兵組織ですか。しかもヨシュアが前線で指示を出してるなんて、毎回毎回損な役回りに愛されてますね、もう!』
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「ふざけんな! この国が、俺達が何をしたってんだ! 入って……ぐっ! ……入ってくんじゃねえよ! 出ていけ! 俺らの国から出て行けよ!」
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『マズい、ヨシュアが手傷を! こうなったら仕方ありません、前回の様にラッパで時間稼ぎと行きましょ……あれ? ラッパがない! そんな! ありえません!』
” 主天使ヨリ、控えなさい ”
『主天使様?!』
” 貴方のラッパは封印しました、前回のような真似はさせません ”
『待ってください! 今回だけ、今回だけ使わせてください!』
” なりません。特定の人間に肩入れをして謹慎になったのを忘れたのですか? 迷える子羊はその者だけではないのです。疾く、持ち場に戻りなさい。今後については追って沙汰をします ”
『そんな! 主天使様! 主天使様!』
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「戦況はどうなった!」
「宰相様、早馬より伝令です! コードル王国軍を騎士団と民兵で押し返し、退却させる事に成功しました!」
「そうか、でかした!」
「あ、あの……ヨシュア、いえ民兵軍のみなさまは無事でしょうか」
「はっ! リーゼ様、それが……」
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『大天使とは名ばかりの私は、また今回もお父さんとお母さんの幸せを救えなかった。どうして……どうしてなんですか? 私はあまりにも無力すぎやしませんか……?』
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「ヨシュア……また会いに来てしまいました。お花を飾らせて下さい。……へリゼラを、私達を守ってくれてありがとうございました」
「……私が前にお話した事、覚えておいでですか? 今日はその続きです」
「本当の事を言うと……私だけかもしれませんが遠い遠い昔に、貴方とお会いした事がある気がしたんです。なのでずうっと勝手に貴方の存在を感じていました」
「貴方と一緒にへリゼラを守ってくれた方達がおります。なので今からお話しする事は誰にも言わないですし、内緒にしておいて下さいますか?」
貴方と過ごす時間が無くなると知っていたなら。
共に逝きたかった。
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