ヨーグルトシャーベットの魔女

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 私は、ヨーグルトシャーベットを作ることができる。  なんだそんなこと誰だってできるじゃないかと呆れて帰りかけた人はちょっと待ってほしい。  何もない空中から。  無限に。  ヨーグルトシャーベットを取り出すことができるのだ。  しかもおいしい。  お腹も膨れる。  どうだすごいだろう。  と、素直に自慢したいことにはしたいのだが。  私はたった一人で孤独に暮らしている魔女なので、自慢できる相手が見つからない。  毎日毎日、ただひたすらにヨーグルトシャーベットをガラスの器に盛っては食べ、盛っては食べ。いつか私の体は半透明にしゃりしゃり光り出すのではないかと思うほど食べまくり。あとは本を読むなり庭仕事をするなり、平凡すぎてつまらない日常生活を送っている。  私以外の魔女や魔法使いは、一体どんな風に暮らしているのか。  まあ、なんとなく想像はつくけれども。  空を飛ぶ魔法が使える人は空を飛び、動物と会話できる魔法が使える人は動物と会話し、枯れ木に花を咲かせるファンシーな実力者は山火事の跡地で活躍し、安眠の魔法の使い手はぐっすり枕やぐっすり毛布やぐっすりアイマスクを売りまくって稼いでいるのだろう。  私はあまり他人と喋るのが得意ではなかったため、およそ二十年は引きこもっていたのであるが。  ついに、こんな妄想を毎日ぼんやり繰り返すほどに、暇を持て余してきた。  というか、単純に寂しくなってきた。  では、外に出よう。  とはならないのが私である。  暇だ。そして寂しい。しかし、外に出るのは怖い。  ……ならばどうする?  私は、ドラゴンを作り出した伝説の魔法使いの物語を思い出した。  命を作り出すことは、案外簡単なのかもしれない。  だって、そういう伝説が残っているんだから。  できるんじゃないか? 私にだって。  うん。できるはず。  何の根拠もない自信に沿って、私は魔法を使った。  ヨーグルトシャーベットの小妖精が、しゃりんっと生まれた。 「こんにちは……おかあさん?」  喋った。  めちゃくちゃ可愛い。  私は微笑みを返し、小さく頷いてみせる。  小妖精は、ほえーっという顔をして、目をぱちくりした。  大成功だった。
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