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 なんで僕の名前を、と目を凝らす。  その天使は薄いグレージュのパジャマ姿で椅子に座っていた。  その天使は左手に千切りキャベツの盛られた皿を持っていた。  その天使は右手に握られた箸でしっかりと魚のフライを挟んでいた。  その天使は僕のクラスメイトとそっくりだった、 「天真(てんま)さん……?」  僕が彼女の名前を呼ぶと、彼女は小さく頷いた。  それ以外の部分は微動だにしない。僕も自分が一歩すら動けていないことに気付いていなかった。 「えっと、こんばんは」 「あ、こんばんは。こんなとこで奇遇だね」 「うん、私もびっくり」 「それはなに?」 「アジフライ。一口いる?」 「ありがとう」  サクリ。 「いやサクリじゃなくて」 「はっ」  揚げたての衣の軽快な音で僕たちは我に返る。  混乱のあまり思わず彼女のアジフライをかじってしまった。なにしてるんだ僕は。 「さっきまで家でごはん食べてたんだけど、ここどこ?」  召喚陣の上で困惑する彼女と口の中のアジフライを咀嚼する僕。衣の砕ける音を聞きつつ状況を整理した。  彼女の名前は天真灯里(てんまあかり)。僕のクラスメイトで、うちの学校でも有名な美少女だ。  召喚陣の光と羽根は消え、代わりに彼女と彼女の夕飯が現れた。  アジフライを飲み込む。  ソースと魚の香りが鼻を抜け、僕はようやく落ち着きを取り戻す。そして同時に自分の失敗を認識した。  僕が召喚したのは天使ではなく、天使のようだともてはやされるクラスメイトだった。
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