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「佐門くんは唐揚げにレモンかける派?」 「かけない派かな。カリっと感がなくなっちゃうから」 「せっかくの二度揚げが台無しだもんね」 「さすがこだわってるんですね料理長」 「唐揚げは歯応えが命ですから」  誇るように大きな音を立てて天真さんは唐揚げをかじる。  その音を聞きながら僕は大皿に盛られた唐揚げの山からひとつ箸で摘まんで自分の皿に運んだ。  彼女に負けず大きな音を立てて唐揚げにかぶりつくと、パジャマ姿の天真さんは嬉しそうに笑う。 「佐門くんって意外といい食べっぷりだよね。知らなかった」 「僕も天真さんがこんなに料理できるって知らなかったよ」 「ふっふっふ。おいしいでしょ」 「それはもうとんでもなく」 「ごはんがおいしいって幸せだよね」  天真灯里はうちのクラスの光源だ。  彼女の明るさで教室は照らされ、生徒は集まり、みんな笑顔になる。影のほうが落ち着く僕は彼女とほとんど話したこともなかった。  その美少女クラスメイトの手作り料理を召喚陣の上で一緒に食べる。  そんな異様な状況にはじめは緊張したが、三度目ともなれば徐々に慣れてきた。 「でも本物ってなかなか召喚できないんだね」  天真さんは不思議そうに呟く。  はじめて彼女を召喚した日から、僕は何度か天使を召喚しようと試みていた。  けれど何度やってもどうしてか僕の部屋には天真さんが召喚されてしまう。しかもどうやら彼女の身体が触れているものも一緒に召喚してしまうらしい。  その性質に気付いてから、僕が召喚を失敗するたびに彼女は自分の学習机ごと料理を持ってきて振舞ってくれた。 「おかしいよね。この召喚陣けっこうレビュー良かったんだけどなあ」 「え、なにこれどっかで買ったの?」 「通販」 「勇気がすごい」 「私にも召喚できたんだ! の声続々」 「そんなほいほい召喚されてるのね天使って」
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