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その日のその後、奴らはハンスのところに来なかった。
その翌日も来なかった。代わりに、翌日は自習するようにとか言って、なぞるだけの漢字ドリルを渡された。
ハンスはそのドリルを素手で破りまくった。細かく細かく千切って部屋に撒いた。せいせいした。
見回りに来た別の奴が怒って掃除しろと命令したが、ハンスは無視した。
ハンスは矢島が見せたカードのことを思い出していた。
子どもの頃、レスターともよくやったゲームだ。日本で売ってるところや、やってる人は見たことない。ネットでちらっと見たことがあるぐらいだ。
別にやりたくはない。ちょっと懐かしかっただけだ。
それにしても退屈だった。脱走をしてみようとはしたが、やっぱり軍隊ってのはちょっと刑務所とは違っていた。でもうまくいくと、武器庫とかにたどり着けるんじゃないかとも思って、ハンスはいつかチャンスがあったらやってやろうと思っていた。
サブマシンガンをガンガン撃ってみたい。戦車とかも乗り回してみたいじゃないか。そしたら友だちにも自慢できる。
夕食や風呂の時間はそういうチャンスだったが、どうやらハンスは要注意人物らしくて、常に3人ぐらいが周りを固めていた。不意をつこうと思っても、そう簡単には何もできなかった。
結局、鍵のかかる部屋に軟禁されるだけになって、退屈になる。暴れようにも止めてくる遊び相手もいない。
自習ってなんだ、クソ。
ハンスは舌打ちし、壁を殴った。そうやって騒ぐと、たぶん壊されたくないからか、誰かは来た。その誰かを相手に、ハンスは暴れて発散した。
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