終末の決断

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Act1. 楽園 「はぁーっ、リゾート最高ー!」  雲ひとつない青空の下に澄み渡るエメラルドグリーンの海。静かな白い砂浜には、程良い間隔でパラソルの花が咲いている。  そのうちのひとつに、カクテル片手にビーチチェアでくつろぐ茉莉奈と恵里香がいた。   「まじで生き返るーっ! 恵里香も楽しんでる?」 「もちろんよ! 茉莉奈、ありがとう。でも、大丈夫?…その、全部出してもらっちゃって」 「金は気にしないで。大金入ったんだから。うちら親友じゃん。ふたりともシングルマザーで子育て苦労してんだから、これぐらい当然のご褒美よ。楽しもう!」  二人はカクテルグラスを合わせた。 「でも、茉莉奈は私と違って子育てちゃんとしてるじゃん。健人くんのことSNSにアップしてるの見たけど、すごいよ。私には無理」 「あー、あれ?」茉莉奈は渋い表情になった。「表向きよ。4歳になったころから、あたしの言うことは聞かなくなるし、わがまま言い放題だし、何回捨ててやろうかと思ったか!」 「そうなの? わかるー、うちもいっしょ。本っ当むかつくよねー。やっぱうちら親友だよ」 「あ、でもね、恵里香、捨てたらだめよ。いずれ闇オクでびっくりだからさ」 「ヤミオク?…って何?」 「知らないの? 闇オークションよ。略してヤ・ミ・オ・ク。捨てようと思ったものが、超超高値で売れんのよ」 「えっ⁈ まさか健人くん、その闇オクで売ったの?」 「これまで苦労して育てた健人からの恩返しってことよ……ま、恵里香はやらないでしょうけど。もしやるんだったら、優菜ちゃんは女の子だし、恵里香に似て美人だからさ。きっと健人より高いわよ」 「そ、そっか……考えとくね」  恵里香は、驚きを隠して茉莉奈に合わせたような返事をしたが、内心ではとても悔やんでいた。  もっと前に闇オクのことを教えてほしかった。そしたら優菜にもっと食べさせて成長を促して、SNSで盛った写真を次々アップして……。  今からじゃ間に合わないかも……。
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