特別な人

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特別な人

 わたしの祖母は特別な力をもつ人で週末になると見ず知らずの大人や子供が集って祖母になにかお願いしていた。 『あたしゃすべてお見通しさ。あんたこれから悪いことが起きるとご先祖さんが言っておる』 『先生ありがとうございます』  後にあれは霊感商法の類いだと知るのだけど、まだ小さかったわたしには祖母が身体を震わせ、口調も変える姿が変だと思っていた。  居間の様子を空いたわずかな隙間から覗き見していたわたしに、足音もなく母が近づいてきて。 『お祖母ちゃんは天に選ばれたお人なの。お母さんにはその力はないけれど、あなたには選ばれたお人になってもらいたいの』 『お祖母ちゃんは天使なの?』 『そうとも言えるわね』  白い翼が見えない天使なんて変なのと小声で母に言ったら、微笑みを浮かべたまま頬を叩かれたことを覚えている。 バシン!!  乾いた音も頬の痛さも覚えているのに、立ち聞きしていたわたしは怒られなくて、母がその日ずっと祖母に謝り続けていたことだけが、嫌な記憶として刻み込まれたんだ。
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