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   むかしむかし、あるところに。  母を亡くした美しい娘がおりました。  父が連れて来た継母は、初めは優しかったものの、次第に陰で娘をいじめるようになりました。  醜い自分の連れ子を愛していた継母は、美しい娘をひどく妬んだのです。  やがて父が亡くなってしまうと、継母は娘を使用人としてこき使いました。  そんな、ある雪の日。  継母は、娘に紙でできた服を着せて外に放り出し、カゴいっぱいの苺を摘んでくるように命じました。  娘は途方にくれました。  こんな真冬に、どこへ行けば苺が摘めるというのでしょう? 「苺で籠がいっぱいになるまで、帰ってくるんじゃないよ!」  娘は裸足のまま、雪の降り積もる森へと入っていくのでした……。 ***************  小さい頃、炉端で聴いた物語。    まさかこの僕が、その主人公になるなんて。  あの頃は夢にも思わなかった。  
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