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Ⅰ-1 不幸の始まり
Ⅰ-1 不幸の始まり
「父さん」
空っぽの棺桶の前に一人残されて初めて、僕は泣いた。
父さんが、遠い東の海で死んだらしい。東の国から帰る途中、船と一緒に海の底に沈んでしまった。
幼いころに母を亡くした僕を、男手ひとつで可愛がってくれた。羽振りのいい貿易商だった。僕も、何不自由なく幸せだった。父さんの傍らに黒い花嫁、ザクロさんが来るまでは……。
カリスマ美容師という評判で、父さんのお抱え衣装係となったザクロさんは、いつのまにやら父と婚約。
父さん、悪い催眠でも掛けられたんじゃないかな。だってどう見ても彼女、いや彼はおっさ……。うぐぐ。
屋敷の皆にはおかしな呪いが掛けられていて、これ以上はどうしても口にできないようになっている。僕もそう。ザクロはおっss……うぐぐ、ほらね。
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