Ⅰ-1 不幸の始まり

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 ある日突然、僕はザクロさんから破茶滅茶なお使いを言い渡された。 「さあさあ、今すぐシブヤの聖地イチマルキウに行くんだよ!本物のスケスケショウブシタギをとってきておくれ!」  なにを言っているのか分からなかった。  ザクロさんの命令は基本一回しか口にされない。質問をするだけで怒るんだ。そのぐらい察しろうすのろバカ!って言われる。かと言って実行せずに放置してると、後でその百倍怒られる。  僕は、おそるおそる、そのスケスケなんたらとは何かを尋ねた。 「あなたって本当に野暮! レディにそんなこと説明させないでちょうだい」  なるほどそれは、れでぃ……には口にできないようなものなのか。僕はごくりと唾を飲む。またザクロさんのむちゃぶりが始まった。 「何をしてるの。グズなんだから! さあ早く、行った行った! それが出来るまで食事は抜きだよ」    僕はとりあえず、出かけるフリをした。  ザクロさんのむちゃぶりは、今に始まったことでもない。諦めずによーく考えてると意味がわかる時もある。それにかけよう。だめなら鞭の折檻が待ってる。考えろ、考えろ。  外は一面の雪。川まで降りて行き、ツルハシで氷を割って、水を汲む。  スケスケ……何て言ったかな。スケスケ……。呪文みたいな名前だったな。植物だろうか。薬草だろうか。そんなもの、突然とりに行けと言われたって分からない。  馬小屋と鶏小屋を掃除しながら考える。調理場の手伝いでジャガイモの皮を剥いている時、ようやく名前が思い出せた。  スケスケショウブシタギ、だ。
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