2022年版〜棗藤次〜

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2022年版〜棗藤次〜

「藤太、恋雪、メリークリスマスやで〜♪」 「わー!」 「キャー!」 「あらあら、良かったわね2人とも。」  …師走も中頃の、みんな楽しみクリスマス。  勿論、京都北山2丁目、ノアール北山の2階角部屋の棗家も例外ではなく、テーブルには絢音手作りのパーティー料理がぎっしり並び、藤次は藤次で、2人の子供にクリスマスプレゼントを渡す。 「パパ、あけていい?」 「おお!早よ開けてみ藤太!!お父ちゃん、頑張ってゲットしてきたんやで〜」 「えー…なんだろぉ〜」  そう言って包みを開ける藤太をニコニコしながら見つめる藤次。やや待って、藤太の顔がパァッと笑顔になる。 「わぁ!ずっとほしかったライダーマンレッド!!しかもおっきい!!」 「ほうかほうか。喜んでくれて嬉しいわぁ。藤太に喜んでもらいとおて、お父ちゃん、玩具屋さん何軒も回ってゲットしたんえ?」 「うれしい!!パパだいすき!!」 「ほうかほうか。可愛いのぅ〜」 「あーうー…」 「あらあら恋雪、ラッピング食べちゃダメよ?さあ、ママと開け開けしましょうねー」 「うー…」  そうして、プレゼントの端を噛んでいた恋雪からそれを取ると、絢音は綺麗に包装紙を解く。 「キャー!!」 「あらぁ、可愛い猫さんのぬいぐるみ。柔らかくてフカフカで、触りごごち良いじゃない。」 「せやろ?それ、有名なぬいぐるみ作家はんに頼んで作ってもろた一点もんやねん。女の子は、小さい頃からええもんに触れて、感性鍛えんとな。なー恋雪?」 「ぱあぱ!ぱあぱ!」 「うんうん。可愛い可愛い。」  そうして2人の子供の頭を撫でて抱きしめた後、藤次は絢音に小さな箱を渡す。 「ほら、お前にもプレゼント。似合うとええけど。」 「ええっ?!私にも用意してくれてるの?!」 「当たり前やん。可愛い嫁はんなんやから。ホラ、開けて。」 「う、うん…」  戸惑いながらラッピングを開き箱を開けると… 「わあ…綺麗…」 あったのは、小さなダイヤモンドが花のように形どられた、瀟洒なピアス。 「付けて?」 「う、うん。」  いそいそと付けて藤次に見えるように髪をかき揚げると、彼はそこに触れ、そっと絢音の唇にキスをする。 「好きや…」 「私も、好き…ありがとう。でも困ったわ。私、あなたに何も用意してない…」 「俺はええんや。美味い飯も、可愛い子供も、あったかい家ももらってる。…十分や。」 「藤次さん…」 「パパ、ママ?」 「あー?」  見つめ合う自分たちの間に入って不思議そうに見る子供達ごと、藤次は絢音を抱きしめる。 「大事にするからな。お前達の笑顔見れるなら、俺なんだってする。せやから、いつまでも笑顔で、側におってな?」 「パパ、くるしい…」 「あーあー」 「藤次さん、お料理冷めちゃう。早く、席に就きましょう?」 「あ、ああ…せやったな。絢音が忙しい合間に一生懸命作ってくれた料理や。冷めてまう前に、食うか!」 「わーい!!ボク、チョコレートケーキ!!」 「あーかーん!メインは後や!!先にホラ!チキンチキン!!」 「わあ!おおきなとりさん!!」 「せやで〜。七面鳥言うんや。ちょいまちや、切り分けたる。」 「ボクも!ボクもやる!!」 「あーあー」 「ハイハイ。恋雪は、こっちでママと離乳食食べましょうねぇ〜。ママ、いつもより丁寧に作ったのよ〜?」 「まあま!まあま!」  和気藹々と食卓を囲み、絢音は洗い物をしながら、リビングで子供達と過ごす藤次の後ろ姿を見つめて、そっと耳に触れる。 「私にできるプレゼントなんて、一つしかないわよね…」  そうして食洗機のスイッチを入れ、絢音はゆっくりとリビングに行く。 「あの…藤次…そろそろ子供達寝かせて、ワタシと…」  照れながら顔を上げると、そこにあったのは… 「やだ…」  目の前に広がっていたのは、プレゼントを抱えて幸せそうに眠る子供達を優しく抱き、安らかに眠る藤次の姿。 「藤次…藤次ったら!」 「うーん…」  どんなに体を揺すっても、藤次は締まりのない顔で眠り続けるので、絢音はぷうっと頬を膨らませて、彼の耳をつねる。 「なによ。このワタシが誘ってるのに無視?…ホント、憎い人…」 「…うーん……みんなぁ、すきやぁ〜」  幸せそうにむにゃむにゃと笑う藤次の幸せそうな顔を見て、絢音はため息をつく。 「仕方ない。プレゼントは、明日にお預けね。明日は寝かさないんだから。覚悟なさいよ?」 「うーん…」  泣き黒子の浮かぶ頬をちょんと突いて、絢音は寝室から毛布を持ってくると、眠る彼らにかけ、その場に寝そべり自分も毛布に入ると、藤次の広い背中に縋る。 「ワタシ、幸せよ?藤次…」  カーテンの隙間から覗く、しんしんと降り始めた雪を見つめながら、絢音は静かに目を閉じて、棗家のクリスマスは、静かに幸せに、過ぎていったのでした。
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