天使の贈り物

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 そんな森エリアだったが、なぜか一つだけ、白いベンチが設置されていた。植物の蔓を模したようなゴシック調のベンチは鉄製で、白い塗装が施されていた。ただこれも手入れが行き届いておらず、高貴な雰囲気の白いベンチは灰色に汚れて、まるで見捨てられた古城の残骸のようだった。ベンチのそばには花壇みたいなスペースがあったが、そこも雑草の青い花が咲き乱れ、逆にメルヘンな世界を作り出してしまっていた。  けれど、こんな場所を求めていたのだ。  人のいるところに、私の居場所はなかったから。  中学生になり二度目の不登校になって、ひと月が経った。 「焦らなくていいよ」  メンタルクリニックの医者は言った。 「学校に行かなくても大丈夫。花さんのペースでいけばいいから」  思い出しただけでどんよりする、あの医者のニセモノみたいな白いひげ。  焦らなくていい。学校に行かなくてもいい。自分のペースでいけばいい。  まるで、お前は出遅れたんだ、と念を押されたようだった。 「花は、そのままでいい」
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