天使の贈り物

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 大人たちはみんなそう言う。でもその言葉は「」で折りたたまれていて、開くと「ほんとは、変だけど」が出てくるのだ、きっと。そんな気がする。  家にいたら、母が忙しそうなのが目につく。掃除。洗濯。そこどいて、片付けたいから。花は、何もしなくていい。「そのままでいいのよ」。  そういう時私は、途方に暮れて「散歩」に出かけた。母は、行ってらっしゃいと笑って手を振った。私が外に出るのは、とにかくよいことだと考えているみたいなのだ。  どこに行けばいいのか分からない。  そんな私がたどり着いた先が、この森エリアなのだった。  私は森エリアが好き。だって、森エリアはみんなに嫌われている場所だから。学校よりも家よりも、私にふさわしい場所はこの森エリアだという気がする。それは多分、間違っていない考察で、だから私はこの場所にたどり着いたんだと思う。  いつかは白かったベンチを目指す。  ところが今日は、ベンチが白かった。  先客がいたのだった。
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