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実際に抱かれてみたら、カールの身体はあたたかかった。少しゴツゴツした肩や腕が私には心地よかった。
「このままこの人と付き合ってもいいかな」と思う程度には、よかった。
カールは見た目もきれいだし、セックスも悪くない。一緒に歩いたらどんな気持ちだろう。私は彼のぬくもりの中で、ぼんやりとそんなことを考えていた。
「育ちゃん、セックス好きじゃないんだね」
事が終わった後で、カールはつぶやいた。私に背を向けて、ぷかぷかと煙草を吸っている。真っ白い大きな背中。後ろから少し触れてみても、びくともしない。
「でも、嫌いじゃないよ」
「嫌いでしょ。やればわかる」
「だけど、カールは優しくてよかったよ」
「俺、優しくないよ」
少しだけ振り向いて、カールは私を見た。青い目で。その瞳は、本当に優しくなかった。ただ「青くてきれい」なだけだった。
見るだけなら天使のように美しいのに、表情も感情もない瞳で、一緒にいても何もいいことはなさそうな目をしていた。
「カール、セックスしたら、終わりって感じ?」
「しようって言ったのは育ちゃん」
「それで、私のことは、なんとも思わないの?」
「なんともって、どういう意味?」
「私のこと、好きとか思わないの?」
「どっちでもいいよ。育ちゃんのことは嫌いじゃないよ」
「じゃあ、好きなの?」
「好きだよ。サークルで一緒だもんね」
何を言っても、無駄な気がしてきた。私は起き上がって帰り支度を始めた。シャワーを浴びたいけれど、もう一刻もここにはいたくない。
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