天使の瞳

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「帰る」 「そっか、また学校でね」  笑いもせずに、咥え煙草でひんやりした目で、私に手を振る。この人、こんなキャラだったっけ。そもそも私はカールのこと、今まで気に留めていたっけ。なんでセックスなんかしたんだろう。  何も言わずにドアを開いて、カールを睨みつけて外に出る。なんだか、なんだかとても、プライドが傷つけられた。そんな感じがした。  玄関の外を見ると、ひどく見慣れた風景が広がっている。ここどこ? 「ちょっと……なにこれ。ここ、私のアパート?」  あまりにも見慣れ過ぎてる。私は一度階段を降りて、外に出てみた。アパートの名前を確認する。やっぱり私が住んでるアパート。入って郵便ポストを確認した。やっぱりやっぱり私のアパート。二階建てのオンボロアパート。 「最悪……」  二回へ上がってカールの部屋を通り越し、私の部屋の目の前に立つ。鍵を取り出してドアを開く。思った通り、私の見慣れた部屋。  靴を抜いで部屋に入る。寒いからエアコンをつけた。今さっき起こったことは、いったいなんだったんだ。カールとセックスした。なにも得るものがないセックス。あんなのただの安売りをしただけだ。自分で自分が情けなくなった。  シャワーを浴びて、別の服に着替える。お腹が空いた。コンビニでいいから、なにか買いに行こう。  私はコートを着込んで玄関を出た。  二軒向こうの部屋から、カールが出てくるところだった。
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