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「あれ? 育ちゃんか」
「……ここ、私んちだった。同じアパートだったんだね」
「そっか。どこ行くの?」
「コンビニ」
「俺もコンビニ」
並んで歩く必要ないけど、結果的にそうなった。カールはさらさらとした金髪をなびかせながら歩く。背が高い。ドイツの人は大きいんだな。
別々に買い物をして、また並んでアパートへ帰る。カールは鼻歌を歌っていた。なんの曲かわからない。
私は思わず聞いてしまった。
「その曲、なに?」
「今の曲? シューベルト」
「なにそれ。ドイツの人は鼻歌もクラシック音楽なの?」
「知らない。俺が好きなだけ」
私を見下ろしながら歩く彼は、やっぱりひんやりした目をしていた。さっきセックスしたのに、嫌われてるんだな、きっと私。別にいいんだけど。
アパートに着いて、カールの部屋にたどり着いた。私の部屋は二軒向こう。
「一緒に食べる?」
「は? カールの部屋で?」
「うん、どうせ一人でしょ」
「そりゃそうだけど」
「どうぞ」
カールは私を再び部屋に迎え入れた。わけもわからず私はさっき出てきたばかりの彼の部屋に入る。
買ってきたコンビニ飯を二人で順番にレンジであっためて、ベッド脇のローテーブルで黙々と食べた。カールの箸の使い方は、正しかった。
「私のこと、嫌いなんじゃないの?」
「嫌いって言ってないよ」
そういえば、同じサークルだから好きだって言ってたか。
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