天使の瞳

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「サークルで一緒ってだけで、セックスするかな? カールってドイツにいてもそうだったの?」 「そんなことないよ、好きな人としかしなかったよ」 「じゃあ、私のことは本当に好きなわけでもないのに、セックスしたんだ?」 「サークルで一緒だから好きだよって言ったよ、俺」 「なら、私のことが好きなのね?」 「まあなんとなく好きかな」  カールのキャラがわからない。今だって、全然優しくない。彼の目が冷え冷えしている。好きでいてくれるなら、もう少し優しい顔をしてくれたっていいのに。  私はコンビニ飯が美味しく感じられなくなって、ご飯を残したままふたをして、またレジ袋に突っ込んだ。 「育ちゃんこそ、俺のこと好きじゃないでしょ」  カールの言葉に、うっと息がつまる。 「好きでもないのにセックスするのは、そんなに楽しいことじゃないよ。やめた方がいいよ」 「私は……カールと抱き合うのはいいなと思った」 「抱き合う……セックスだけ、よかった?」 「……このまま付き合ってもいいなって思った」 「嘘ばっか」  カールの冷たい目が、私の目を貫いた。 「そういう嘘を言う育ちゃんとは、付き合えないよ。優しくもできないよ」 「嘘って」 「だって、昨日の夜からヤケ酒だったし」 「それはそうだけど、カールと抱き合うのはよかったよ」 「それもヤケだよ。俺のことが好きなわけじゃないよ」  私はもう、ここにはいられない。なにもかも、カールの言う通りだった。やけっぱちでセックスして、そのまま付き合うなんてあり得ない。傷ついているのは、カールの方かもしれなかった。 「ごめんね、私が悪かった。帰るよ」 「そっか、じゃあまた学校でね」 「カールさ、フルネームなんだっけ」 「カール・シュライアーだよ」 「ありがとう。覚えた」 「育ちゃんは、高野育(たかのいく)だよね」 「うん、ありがと」 「またね」  私は自分の部屋に戻った。エアコンのかかったあったかい部屋で、床に座り込んで泣いた。なんで泣くのか、自分でもわからなかった。  カール、ごめん。自分勝手なことして、ごめん。  あなたが最後に「またね」と言ってくれたとき、あなたの瞳はあたたかく優しかったよ。 【完】
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