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「そうだな。そちは、骨董の真贋を見抜く勉強をするのはもちろん大事だがな、どうやらその前に人を見抜く目を磨かんといかんな」
「あちゃ、そうきましたか」
「あちゃときたか。ではこれは『あちゃちゃの椀』として家宝にしなさい。そうでもなければ、どうだ、うちのポチのご飯茶碗にでもしてやるかな」
「え、ご家老それはないでしょ。仮にも十五両もしたものですよ。ワンちゃんのご飯入れとはバチが当たります」
「お、バチが当たるか。そういえば、先日、そちの細君がやって来てな、『この間は秀吉のしゃれこうべだなんて、まがいものを売りつけようとしたようで、とんだご無礼を』と謝っておったぞ」
「は、うちのやつがですか」
「うむ。それで、あれはとんだくわわせ物で木魚だったそうだな」
「は、あいつそんなことまでばらしたのですか」
「まあ、ばらしたというか、そんなものを亭主が売りつけたことを済まないと言ってたな」
「申し訳ございません」
「まあ、こちらが被害を受けておらんので、良しとするがな。細君は、今度そんなことがあったら、買い戻させていただきますので、どうか手打ちにはしないでくれと頼まれた」
「そうですか、それは良かった。もし手打ちにでもなったら、お椀に済まない」
「それはまた、どうして」
「ええ、お椀だけに、バチをあてることができません。せいぜい女房に、『あんたのことなんか、知るもの(汁物)か、出ていきなさい』と言われるに決まってますから」
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