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坂井さんが来て1週間が経った。坂井さんはいつも笑顔で店員にもお客さんにも笑顔を振りまいていた。パートさんやアルバイトさんとも打ち解けてきた。
「おはようございます、今日もよろしくお願いします!」
「……」
横山さんだけが打ち解けてくれなかった。坂井さんの挨拶を無視し、他のパートさんとお喋りを始めた。ちゃんと指導してもらわなきゃ困るのに。参ったなぁ……。
「ねえ、歓迎会しましょうよ!」
戸田さんが言い出した。
「歓迎会?」
「ドレミちゃんのよ。いつも新しい人が来ればやってるじゃない」
「ああ、そうですね」
新しいパートさんや他の店から社員が転勤してきたら、いつも歓迎会を開く。坂井さんは新入社員だから盛大に歓迎してあげよう。
あ、これはいいチャンスかもしれない。横山さんも仕事以外の場所で話をすれば、坂井さんとも仲良くなれるかもしれない。
「是非やりましょう! 戸田さん、いいお店知ってますか?」
「任せておいて。この辺は私の庭だから」
こういう時は地元のパートさんが頼りになる。楽しみだ。
「それって、どうしても出なければいけないんですか?」
歓迎会の話をすると、坂井さんが珍しく口をとがらせた。
「坂井さんの歓迎会なんだよ。主役がいなきゃ始まらないよ」
「私……残業なら喜んでします。でも、仕事以外は遠慮したいです」
「……そ、そうなんだ」
そういえば最近の若い人は会社の飲み会に参加したがらないと聞いた事がある。仕事とプライベートはきっちり分けたいらしい。そりゃあ飲み会は強制ではない。残業代も出ない。でもコミュニケーションを取るには絶好の機会なんだけどなあ。
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