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「あれっ? じゃあ、どうして約束に十五日間も猶予を設けたんですか? この作戦は今すぐにでも実行に移せますよね?」
紬が問うと、喬はちらと紬に目を向けて言った。
「いや……。あんたには、少し考える時間が必要かと思ってさ」
「考える時間?」
紬は怪訝な顔で首を傾げた。
その頃には、二人はすでに大豊神社から出て、哲学の道まで戻ってきている。喬はどことなく憂いを帯びた表情で付け足した。
「そう。小春の事情を知れば、そう簡単に結論を下すことはできなくなるだろうからね……。というわけで、帰る前にちょっとだけ寄り道していいか? あんたに見せておきたい場所がある」
「えっ? あ、はい。大丈夫ですけど……」
一刻も早く帰ろうとしていた喬が遠回りを提案してきたことを意外に思いながら、紬は素直に彼の後を追った。
十分も経たずに二人がたどり着いたのは、哲学の道付近の工事現場だった。住宅地の中で全面をシートに覆われた建物の外観をうかがうことはできないが、その大きさから推察するに一軒の京町屋のようだ。
「改築中の古民家……ですか?」
紬の問いに、喬は小さく首を縦に振る。
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