星が降るのは君のため

2/6
前へ
/6ページ
次へ
「もう、(らい)ったら!」  パン。再び、風船が弾ける効果音が鳴ったと思ったら。次は美少女。ブロンドくるくる巻き毛に、ベビーピンクのドレープたっぷり衣装にすっぽり包まれて。桜色のほっぺがつやっつや。 「ヒドイですわよ、いつもわたくしを置いてきぼりにして」 「ユメがいなくても、一人で仕事できるし」 「そんな勝手ばかりするから、いまだに見習いなのでしょ」 「なにこれ、すっごい眼福」  思わずスマホを取り出した。ギリシャ風美青年と美少女がイチャイチャしてる~。 「わたくしたちは写りませんのよ」 「え」  美少女の指摘に、シャッターを押しまくる指を止めた。 「わたくしたちのことが見えているのは、あなただけですし」 「そうなの?」 「声が聞こえているのももちろん、あなだだけですわ」  えぇそれ私、どんだけ迷惑な客? 「もっと早く、教えてもらいたかったです」  さんざん、一人で驚いたりわめいたりしちゃったよ。  「あらためまして、ご挨拶申し上げますわ。天からあなたへメッセージ、天詩をお届けにあがりました、天のお使い、つまり天使のわたくしユメと」  輝く美少女スマイルに促されるが、彼はまったくとりあわず、私の部屋にところどころ積まれた段ボールを眺めていた。 「引っ越し?」 「うん。田舎帰るんだ。仕事ももう有休消化するだけだから、荷造りして来週には」 「もう! 雷!」 「ヤだし、なんかわざわざそういうの。フツーでいいじゃんフツーで」  イケメンて。しかめっ面でもイケメンなんだな。 「ご挨拶は大事でしょう? 減点しますからねっ」 「ユメちゃん。私ちゃんと聞いてましたから」  どこからか赤い手帳を取り出し、羽根ペンで書きつける涙目の少女を慰めようと思ったんだけど、 「雷はわたくしのですからね」 「あ、ハイ」  睨まれて小さくなるしかなかった。大丈夫です、恐れ多くて一メートル以内に近づけないです。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加