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「光希、これ恋人?」
うっひゃビックリした。
「いきなり背後からささやきかけるのやめて!」
部屋の端から端まで瞬間移動しちゃったじゃん。名前教えたらいきなり光希呼んでるし。アナタ私より年下でしょうに。ダメだ、たった一言返す間も、眩しさに耐えられそうにない。
「恋人だなんてとんでもない」
後ろをとられないよう壁に背をつけ、雷が三段チェスト上の推しコーナーからつまみあげたアクリルキーホルダーについて弁明した。
「私がご恩返しに、一生かけて推しまくろうと決めたアイドルのカイトくんです」
「へえ」
「でももう、引退しちゃうけど」
「落ちこんでるの?」
「いつの間に至近距離に!」
壁に片手ついて覗きこんでくるとか、カンベンしてよ。心臓がビッグバン起こして私銀河のチリになるから。
「田舎帰る前に、心残りあるなら早くしといた方がいい」
「え」
「見習いの雷は引っこんでいてくださいな」
ぬっとユメちゃんに間に割って入られる。睨まないでください、私のせいじゃありません・・・。
「光希さん。おとなしく荷造りなさって、外出も控えるとよろしいわ。あなたの天詩、太陽と月と火星が緊張と葛藤してますもの。勢いに任せた言動は無謀ですことよ」
「よく、わかりませんけど、おとなしくしてた方が身のため、なんですね」
「わかってれば気を付けられるからいいじゃん」
「ダメです」
赤い手帳に再び羽根ペンが走った。
「また、減点? ユメちゃんが何か採点してるの?」
「お目付け役ですもの。わたくしたち天使は、膨大な天体と星座の知識を学んで、何日にも渡る試験に合格して、ようやく天詩が読めるようになるのですわ。雷はいつも、テキストにない読み方をするものだから、最終試験で合格できないんですの。見習いが現場に出るときには、お目付け役が必要なんですわ。減点がなければ、天使に昇格できますのに」
「天詩は従うものじゃない」
「この調子ですものね。わたくしはいいんですけれど。いつも、雷と一緒にいられますから」
「どうして、この姿撮れないんだろう」
まさに、恋する乙女。美少女モジモジがたまらなくかわいらしいのに。
描きたい! って気持ちが、久しぶりに体の奥からわいてきたのにビックリした。そんなの、とっくに諦めたはずだったのに。
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