ソラ・すべては彼のため

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ソラ・すべては彼のため

テーブルに落ちていく雫をしばらく眺めた。 見覚えのあるお店で、タカヤはボクのことを思って泣いていることに頭がぼんやりとする。タカヤが泣いてるとボクも悲しい。タカヤはボクに似て心が孤独で寂しい人間だから。 居ても立ってもいられなくなって、ボクは店員の体の中へ潜り込んだ。 可能だけれど、してはいけないことがあります、と神様は言っていた。この行為がその中の一つだ。叱られるかもしれない。でも叱られるくらいならまだいい。下手をすると天使の免許が剥奪されるかもしれない。そうなった後のことは想像すらできない。 ……でも、だったら! それでも構わないから、今、タカヤへちゃんと伝えなきゃいけない。 泣かないで。 好き、大好き。 ――俺も大好きだよ。心から愛していたと神に誓える。会いに来てくれてありがとう、ソラ。 その瞬間、温かな光りに包まれたような心地よさに目を瞑った。 タカヤは気づいてくれた。 見えるはずのないボクのことを見つけてくれた。 あの日も、そして今日も。 気持ちが通じることはこんなにも嬉しいことなのか。 嬉しすぎて言葉にならないでいると、言葉が水となって目から出てきた。とても温かい滴だった。 すると、同時に天から大天使が降りてきた。その目は微笑んでいるけれど、禁忌を犯したボクはきっと裁かれる。 天の門が閉じる時間です、と大天使は言った。涙を拭いて大天使に向かい合う。 「やり残したことがあるんです。もう少しだけ待ってください」 ボクは急いで背負っていた弓と矢を取り出す。矢の先のハートの部分が髪の毛に絡まってうまく抜けないでいると大天使が手を貸してくれた。 「ありがとう」 これは天の使いの仕事ではないのに大天使は何も言わないでいてくれた。きっと、こうすることは間違ってないんだ。 弓を引き、狙いを定める。 タカヤが泣いてるとボクも悲しい。タカヤはボクに似て心が孤独で寂しい人間だから。だから、支えてくれる人がそばにいて、幸せになってくれたら、これ以上幸せなことはない。 大好きなタカヤ。 本当は、ボクがタカヤのそばにずっと居たかった――。 震える手に力を込め、そして弓を射る。 放った矢は狙い通り彼女の胸に刺さった。 行きますよ、と大天使は項垂れるボクの肩にそっと手を回し空へと舞い上がる。 天に空がある理由――それは、いつでもそばであなたを見守っていることを伝えるため、なのだとか。 見下ろす地上はすっかり暗くて、それからずっとずっと遠く感じて、全然そばに居る気がしないのにね。そう悪態をつく元気はあるから、まだ神様に交渉する元気も残っているはずだ。 どんな罰でも受けます。だから、どうかせめて、タカヤが幸せになれるようにお見守りください――と。
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