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夢の中を歩くような夕焼け
初夏の心地よい風が吹く夕暮れ、俺、千夜保(せんやたもつ)は学校の近くにある小さな丘の上で、仲間たちと一緒に夕焼けを眺めていた。
空はオレンジと紫が混じり合い、まるで何か特別な瞬間を告げるかのように輝いている。
その美しさに思わず息を呑む俺の横で、明るく元気な山村凌(やまむらりょう)が声をあげた。
「わあ、この色、すごくきれいだね!」
「本当ですね。まるで夢の中にいるみたいです」
鈴木航(すずきわたる)が静かに頷く。
奴は普段から真面目で、あまり感情を表に出さないタイプだったが、今はその目が輝いているのがわかった。
俺はそんな鈴木の表情を見て、自分の心の奥に何か暖かいものが広がるのを感じた。
その瞬間、俺の心にふと過去の痛みがよぎった。
俺の心を支配する影、その影を引きずりながらも、こうして仲間と夕焼けを共有できていることが、どれほどの幸せかを改めて実感する。
山村の無邪気な笑顔を見ていると、少しずつその心の傷が癒されていくような気がした。
「みんな、この夕焼けにぴったりの詩を作ってみないー?」
突然、山村が提案する。
俺は驚いたが、同時にそのアイデアが心に響いた。
「詩…か。面白いかもしれないな」
鈴木も興味を示し、言う。
「どうせですから、それを書き留めておきましょう。どうなるか楽しみですね」
俺達の間に流れる柔らかな空気が、まるで空を染める夕焼けのように、綺麗な友情の色を生み出そうとしていた。
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