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それから間もなく夫は旅立った。
ルルと同じ、初夏だった。
私は夫を見送って初めての秋の中にいる。
3人で暮らした家に瑠璃と2人、それぞれがやるべきことをやり日々を過ごしている。
「さむっ」
寝室から廊下へ出るとひんやりとした空気に身震いした。庭に面したリビングのカーテンを開けた瞬間、目に飛び込んできたもの。
ありし日の夫が、脳内で自動再生されて目から涙が溢れる。
『あいしてるよ ありがとう』
小さな水の粒で覆われた窓に浮かび上がる夫からのメッセージ。
どうしよう……。
3か月前に一生分泣いたはずなのに。
夫を感じたくて、その跡を指で辿る。
文字をなぞりながら、何か書こうかと思ったけれどやめた。
だって、逝った時に伝えたいから。
「私の方が、あなたよりずっと好きだよ」って。
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