窓に映るラブレター

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 それから間もなく夫は旅立った。  ルルと同じ、初夏だった。  私は夫を見送って初めての秋の中にいる。  3人で暮らした家に瑠璃と2人、それぞれがやるべきことをやり日々を過ごしている。   「さむっ」  寝室から廊下へ出るとひんやりとした空気に身震いした。庭に面したリビングのカーテンを開けた瞬間、目に飛び込んできたもの。  ありし日の夫が、脳内で自動再生されて目から涙が溢れる。    『あいしてるよ ありがとう』    小さな水の粒で覆われた窓に浮かび上がる夫からのメッセージ。  どうしよう……。  3か月前に一生分泣いたはずなのに。  夫を感じたくて、その跡を指で辿る。  文字をなぞりながら、何か書こうかと思ったけれどやめた。  だって、逝った時に伝えたいから。    「私の方が、あなたよりずっと好きだよ」って。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加