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想像もしていなかった登場に目を丸くしていると、キキさんは苦笑した。
「…泣いてたんだね」
そう言って、私の手を優しく握る手と反対の手で絹を撫でるように涙を拭う。
キキさんがつけているシルバーリングが頬に当たって、熱を冷ましてくれるみたいだった。
「こんなに目を腫らして…本当に——」
「…………」
本当に、可哀想と言われるのだろう。
この人は唯一、私の身に起きた悲しみを知っているから、この涙の原因も分かっている。
憐れまれたところで、もうこれ以上傷つくこともない。
何を言われたって、動じることなんて、ないんだから…
「…本当に、俺を滾らせるのが上手いんだから」
「———えっ?」
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