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捨てられた二人
雪の降る寒い日に、私は捨てられた。
新しい女の人ができたから、お前はもう出て行けって。
そう言われて、二人で暮らしていた家を素直に去った。
それが彼の願いなら、そうするしかない。
彼がそう望むのならば、叶える事こそ私にできる事。
それ以外の道は、私は知らないから。
この公園に来て、どのくらいの時が経ったのだろう。
世界に時間が流れていたことを思い出したようにスマホの画面を開くと、22時の文字が目に入り、思わず瞳を閉じた。
かじかむ指を擦り合わせて熱を生もうとするけれど、ちっとも温かくなんてならない。
お財布と通帳。A4の通勤リュックとスマホしか持ってこなかった。
貯金はあるけれど、思考力はない。
空から舞い降りる綺麗な純白を眺めているだけで、零れ落ちる水滴の理由が悲しさから感動に変わる気がする。
「…………」
当たり前に、悲しい。
当然のように辛い。
身勝手な理由で一方的に彼の人生から追放されたことは分かっている。
それに対して、何の感情も湧かないほどに鈍感でもない。
「…これから、どうしよう………」
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