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人間から天使へ
いつまで一人でいればいいか。いつまでこの生活を続ければいいんだ。恋だって、結婚だって、趣味だって、色々楽しみたい人生だった。
もし、まだ間に合うなら……
『選ばれました』
は? 今、何か聞こえた気がする。空耳だろうか。そうだ、絶対なにかの聞き間違いだ。
『選ばれました』
また聞こえた。まるで耳に木霊しているかのように。
幻聴でも聞いてしまっているのだろうか。
疲れてるせいだな。そうだと思い、目を瞑り眠りにつく。
『選ばれました。あなたには天使になっていただきます』
俺は思わず布団から飛び起きた。
「うわ! な、なんだあんたは!」
気がつくと、目の前に人……にしては羽が生えている。それにやけに眩しい。
どうしていいのか分からず動けない。
とにかくここから逃げなければ。体をなんとか這いずろうとするが、突然の出来事で体が思うように動かせない。
「やっと気付いてくれました。あなたに命が下されました」
言っている意味が分からない。命が下された? なんのことだ?
そういえば、天使になっていただきますと言われた気がするな。
俺が天使か? そんなはずは……
「天野守さま。あなたには天使になっていただきます」
何を言ってるんだと思った。意味がわからない。だが、やばいのは分かる。
気がつけば、体が動いていた。その場から、離れ、て……体が動かない。なぜだ。
「逃げても無駄です。あなたは選ばれたのです。天使になるしかないのです」
そんな、ことって……。天使になるってなんだ。
「天使になるには一回、」
直後、俺は痛みとともに目の前が真っ暗になった。いったい、何が起こったんだ。それよりも聞き逃した気がする。天使になるには一回?
『起きてください。あなたにはやらなきゃいけないことがあります』
その声で俺は目覚めた。目を開けると、そこは知らない世界。
眩しい世界に包まれたこの場所はまるで天国のようだ。
ふと、背中に違和感を覚える。背中に届く範囲で手を伸ばしてみる。妙なモノが生えている。
「あなたは天使になりました。今から任務に携わっていただきます」
天使になったということは背中にあるモノは羽か。違うそうじゃない。
俺、天使になったのか? それじゃあ、人間世界には……
「はい、戻れません」
戻れないとはどういうことだ?
「あなたは一度お亡くなりになりました」
え、俺は死んだのか?
「そういうことになります」
そういえば、さっきから俺の心を読み取られている気がするな。なんだ、この感じは。
「それでは案内します。私の後についてきてください」
天使は話すと、どこかに行こうとする。説明もなしにか? 説明も聞かず、天使の任務なんてできるわけがない。
「大丈夫です。任務は簡単です」
そんなことを言われてもな……。というより、勝手に心を読み取って話すなよ。ちゃんと会話しろ。会話を!
そうしているうちに目的地に着いたようだ。前を歩く天使が急に立ち止まった。
立ち止まるなら言えよ。なんて言えるわけもなく、俺は先を行く天使の後についていくことにした。
この先、俺はどうなるんだと不安になりながら。
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