3. ピーターパン・シンドローム

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 先生はあの日、涙を流す私を車の中でずっと待っていてくれた。 『ほら、そんな顔してたらお母さんが心配するぞ』  そう言って笑って、わしの頭を撫でて。  泣きたいのは先生の方だった筈なのに。  私はどこまでもコドモだなあって、情けなくてしょうがない。  こう見えても、私は結構泣くのを我慢出来るコドモだったと思う。聞き分けが良くて要領が良くて、いつも"いい子"でいたと思う。  だから。  先生の前で、あんなに涙が出た自分に、今でもビックリしてるんだ。  お母さんの前でだって、お父さんがいなくなった時以来涙を流していないと思う。ていうか、お母さんには出来るだけ心配かけたくなかったし。  そう思うと、翔くん先生はすごい。  ほんの1ヶ月くらい一緒に過ごしただけなのに、いつからか、どうやってか、すんなりと私の中に入り込んできて、あっという間に私の感情を乱すんだ。  本当、どうやってこんな風にわたしを乱すんだろう。参ってしまうよ。先生はどこまでもずるい人だ。
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