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四人が外に出た時、既に空は暗くなっていた。
「隼人とよく行ったデパートの屋上、星が凄く綺麗に見えるの」
「真音さんの話には、彼がよく出てくるね」
「ごめん……」
飛鳥の指摘に真音は気まずそうに顔を背ける。
「いいよ、今日は彼の代わりで来たんだから」
「その言い方も性格悪いと思うよ〜?」
ムッとした顔を作る真音に、飛鳥は口元に手を添えて笑った。
「隼人はさ、本当真っ直ぐなの。何をやるにも全力、サッカーでもコーチに指導されたら、その練習ばかり。
だから挫折も人一倍辛くて、サッカーをやめた自分には価値がないって思い詰めてるんだ。
でも、私から見た隼人は今も頑張り屋さんだよ。親に心配かけないようにって、勉強もバイトも必死にやってる。夢を追う姿だけが、かっこいいわけじゃないのに何、勘違いしてるんだろうね」
前方に十七階建ての巨大デパートが見えた。
「私はそんな彼に惹かれたから」
真音が取り出したスマホには、隼人からのごく短いメッセージが無数に残っていた。
〝「新曲見た。良かった」
「もう夜は寒い時期なんだから早めに帰れよ」
「この前の5万再生だってな。良かったな」
「遠征行くんだってな。気をつけろよ」〟
画面を宝物のように眺める彼女の姿を見れば、その心は痛いほど理解できた。
「これは……女々しいね」
「あははっ!! 本当、これじゃ距離置きたいのか置きたくないのかわからないよ……」
⁑⁑⁑⁑⁑
二人の姿が店内に消えたのを見届けると、隼人はデパートから顔を背けて逆方向に歩き出した。
「どうするの?」
「どうするも何も、今俺が出て行くとかダメだろ」
サハリエルは腕を組み、隼人の前へと移動すると鋭い視線を向けた。
「くだらない自尊心を優先するなら勝手になさい。それで、あなたが後悔しないならばね。でも機会は決して待ってくれないわ。それが訪れた時に自分の手札で勝負するしかないのよ」
「ったく……〝あんたら〟よくお似合いだよっ!!」
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