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IX
⁑⁑⁑⁑⁑
【都内某所水族館】
「見て! 飛鳥くん、カクレクマノミだよ。可愛いなぁ〜」
真音は淡青色の水槽と同化しそうな瞳に喜びの色を浮かべて、オレンジと白と黒の三色で構成された魚を愛おしげに見つめていた。
隣で頷く飛鳥の視線は、真音の横顔へと注がれていた。
「どうしたの?」
「楽しそうで良かったなって」
「心配かけちゃったね……」
「気にしないで、それに僕は君と隼人くんの隙間につけ込むようなことをしてるんだから」
「飛鳥くんは何というか、直球だね」
「必要なら、嘘だってつくよ」
「あはは……君は結構悪い人なのかな?」
「そうかもね。それじゃ今日一日で僕のことを見極めてみて」
「あっ!」
飛鳥は真音の手を取り、ゆっくりと歩き出した。
⁑⁑⁑⁑⁑
「良い雰囲気ね。気になる?」
「別に……」
「ここまで女を追っかけに来てて、それは無理があると思うけど……」
「お、俺は別に魚、見たくなっただけだ!!」
「あなたね……」
顔を真っ赤に染めて言い訳をする隼人に、偶然にも尾行仲間となったサハリエルは溜息を漏らした。
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