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【都内某所遊園地】    青紫色へとライトアップされた城の前、若い男女が僅かな距離を空けて歩いていた。  先行する栗色の髪とパッチリと開いた瞳が特徴的な女性は、厚手のダッフルコートの上から身体を抱いていた。  男性の方は、やや軽薄な印象を受ける出で立ちだったが、それが嫌味にならない程に整った顔をしている。  赤銅色の髪を外側へと跳ねさせ、優しげなヘーゼルの瞳は少し悩ましげに女性へと向けられていた。  黒のライダースに巻かれた深紅(ワインレッド)のマフラーが風に緩やかに靡く。 「それで遠矢(とおや)ってば、私の誕生日を勘違いしててね……」 「やっぱり、僕は可能性が無さそうですね」 「うん、ごめん……」  苦笑混じりの男性に応える形で女性が発した言葉は、冷気とともに冬空へと消えた。  女性は視線を逸らすと、左手の指を髪に絡めて弄ぶ。 「飛鳥くんはさ、素敵だよ」  女性が隅のベンチへと腰を下ろすと、少しの間を置いて飛鳥もそれに続く。 「服や髪の変化も気付いてくれるし、私の食べ物の好みも覚えてくれる。君と仲良くなって数ヶ月、どれだけドキドキさせられたか。それでも私はやっぱり、遠矢が好き。年下の男の子をキープしたりして嫌な女だよね」 「昔から、こういうポジションになることは割と慣れっこですから」    弱ったように飛鳥は頬を掻いた。   「こんなことに慣れちゃダメだから」 「肝に銘じます」 「よろしい。月並みな言葉だけど、君のこれからの幸せを願っています。君に好感を持つ一人の先輩としてね」 「はい、僕もヒカリ先輩のこれからの幸せを願っています。あなたに恋をした一人の男として」 「なっ……」  意表を突かれて固まる彼女を残して、飛鳥は立ち上がった。 「それと、さっき遠矢さんの話をしてる時の先輩の顔ですけど、この三ヶ月で見た中で一番綺麗でしたよ。あの顔で告白すれば、遠矢さんもイチコロだと思います」  飛鳥はベンチからクラッチバッグを取ると、その場を立ち去って行く。 「あぁ、もう本当に君は……」
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