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Ⅵ-5 恋の恨み
Ⅵ-5 恋の恨み
仲直りをした僕たちは、二階に上がり、ジュンの部屋に入った。
「今夜、城で晩餐会があります」
「へえー」
舞踏会に続いて晩餐会とはお城の人も大変だな。厨房は休む暇もないだろう。
「私も出席しますから、あなたも同席してください」
「僕も?!」
僕のような庶民がいきなり潜入するにはハードルが高すぎる。
「また女装していくの?」
「まさか。小姓としてですよ」
騎士見習いの小姓の制服だという、黒い衣装を手渡された。
「東の国の皇女様や側近達をもてなす会のようです」
東の国と聞いて、僕はジュンを見上げた。ジュンは手早く着替えながら頷いた。
「確か父上は東の国との貿易で消息を絶たれたとか」
「うん、そうだよ」
「ビョルン殿の消息について、何か聞き出せるかも知れませんね」
ジュンはカフスボタンを留めながらにっこり笑う。
身支度を終え、髪を夜会用に整えたジュンは、見違えるほどスマートに見えた。黒ずくめであることには変わりないが、上等な生地に刺繍の施された夜会着だ。
「さあ、あなたも支度して」
服を手に取ったものの、気になるのは領主様のことだ。
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