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「お父様の件はどうするんです。遺書を探すなら、情報の多い王都にいる方が好都合でしょう」
「僕のことはいいんだよ」
「よくありません」
ジュンは僕の髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
「あなたに居てほしいと言っているのがわからないんですか」
僕は顔を伏せた。ケイトがジュンの半分も強引だったらよかったのに、なんて最低なことを考える。そんな自分が嫌で、何だか泣きたくなった。
「冷えてきました。急ぎましょう」
ジュンは馬を再び走らせた。スピードを上げた蹄と風の音で、それ以上話すのは難しかった。
来た時とは少し違うルートを通っているらしい。でも確かに僕らの行く先には、紫の空を背景に、お城のシルエットが見えて来た。馬は王宮へ続く坂道を登り、柳の揺れるお堀の橋を渡った。
ジュンは今日は表門から入城した。
正門からの王宮の眺めには遠近法が駆使されている。裏門から城内に直行した時とは大分印象が違い、奥にそびえる領主の城は威容を放っていた。
中央に抜ける大道りを軸に、庭園と噴水、様々な建物がシンメトリーに配置されている。
ジュンは城の敷地内を進んで行った。領主の城に至るまでの緩やかな丘にはいくつもの館が並び立っている。側近たちの住まいや、礼拝堂、賓客たちの宿泊する館、兵士たちの宿舎や修練場など。
至る所で衛士たちが松明を灯し、見張り番をしている。燈篭に照らされた幻想的な庭や、彫刻の施された建物に僕は目を奪われた。
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