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近衛兵の宿舎に程近い館でジュンは馬を降りた。駆け寄ってきた下働きの男の人が、黒馬を引いて去っていく。
「どうぞ」
ジュンは扉を開けてくれた。
歳をとったメイドさんにマントを預ける。通された広間にはシャンデリアが輝き、暖炉が暖かく燃えていた。
ジュンは暖炉の前の安楽椅子にどさりと腰掛けると、大きく息をついて髪をかき上げた。長い足を投げ出して、しばらく無言でゆらゆら揺れていた。
「疲れたの?」
僕はソファに浅く腰掛けてジュンに尋ねた。
「少しね……あなたも疲れたでしょう」
「僕は大丈夫だよ」
僕が微笑みかけると、ジュンは張り詰めていた表情を少し和らげてくれた。
「ジュンはここで暮らしてるの?」
「ええ、そうです。近衛兵の宿舎と修練場が見えるでしょう」
ジュンが顔を向けた先にはバルコニー付きの大きな窓があり、そこから松明に照らされた宿舎が見えた。
「本当だ」
僕は立ち上がって窓のそばまで行き、夕暮れの王宮を眺めた。
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