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するとジュンがやってきて、背後からもたれかかるようにして僕を抱きしめた。
「どうしたの?」
ジュンは僕の首筋に顔を埋めたまま、固まってしまったように動かない。ただ深く息を吸い込む音だけが聞こえる。
立ったまま寝ているのではないかと、顔を覗き込むと、ジュンはようやく目を上げた。
「今日からはここで暮らしてくれますね。私の小姓として」
「う、うん……小姓のお仕事、ちゃんと教えてね?」
「もちろん。そう気負うことはありませんよ」
「家の雑用なら得意だよ。家畜の世話とか、水汲みなんかも……」
「それは心強い」
ジュンは笑った。
「でもそうしたことはメイドや下男がしてくれますから、大丈夫ですよ」
じゃあ他に何をするんだろう。
「今夜、詳しく教えてくれるって言ってたよね」
「……全部教えてあげますから心配いりません」
そういうと、ジュンはまた僕の髪に鼻を埋めて深く息を吸った。
「ねえ、何してるの?」
「心の癒しとなることも、大事なお仕事の一つですよ」
「……これが癒しなの?」
ジュンは頷きながらまた僕の耳や首に顔を擦り寄せてくる。
ザクロさんがよく溺愛していた猫を顔の上に乗せて息を吸っていたが、それと同じ感じだ。猫のもふもふと獣の香りが究極の癒しなんだとか。大人の世界には、僕には理解できない癒しが色々あるようだ。
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